美しい人たち
後ろでひとつに結った髪に、生花を巻き付けている人をよく見る。
ジャスミンだったり、名前も分からない黄色い花だったりするのだけど。
今日も、チケットオフィスのお姉さんが、バス待ちの私の前を通り過ぎていく。
笑顔とジャスミンの香りを振りまいて。
その感性があまりに素敵なので、
「髪のジャスミンがとてもすてきですね。後ろから写真を撮ってもいいですか」
と、指さしながら英語で話しかけてみるのだけど、お姉さんは英語が分からないみたいで、
にこりと笑って、髪からジャスミンの花輪をするりと外して、私の手の前に差し出してしまった。
「ありがとう」と答えて受け取ったけど、本当はあなたの美しさを撮りたかったのです。
こんなやりとりが、いろんなところで4度もあって、4度も写真が撮れなかった。
写真は撮れなかったけど、すっかりミャンマーのお姉さんたちに骨抜きにされてしまった。
いろいろな市場でジャスミン売りを見た。
いろいろな寺で、仏像の首にジャスミンの花輪が掛かっているのを見た。
生花は日本に持ち帰れないけど、ジャスミンの香りの何かを土産にしたいと思った。
ジャスミンじゃないけど、撮ってもいいって言ってくれてうれしかった。