織りの古都、骨董の古都 Amarapura(アマラプラ)

骨董屋を探している。
マンダレーの町外れにあるというsoemoeという店を探している。
歩き方によるとどうもこのあたりと思われる。
レンタサイクルで30分以上走りまくったがよくわからない。
仕方がないので、行き先を変えることにした。


マンダレー市内から南へ11km。
チャリを転がしてやってきたのは、湖畔の町アマラプラだ。
18世紀、19世紀に王都があったこの町で有名なのは、
ウー・ペイン橋とマハーガンダーヨン僧院だ。


チークでできた1.2kmの橋。一面水で満たされるのは雨季だけ。


ミャンマー最大級の僧院。朝10時、托鉢を待つ僧侶たち。

確かに綺麗なところだけれど、私の目的はこの街の織物だ。
路地を奥へ奥へと入って行くと、普段着の人たちの普段の生活が見える。
賭け事に興じるおじさん、井戸端会議をするおばさん、スナックの屋台。

織機の音がどの辻でも聞こえてくる。
ほとんどはエンジン音が混ざっているから、機械織りだ。
手織りの工房を探したい。
道を尋ねて、工房にたどり着いた。
観光バスが2台も止まっている。
外国人観光ツアーのスポットになっているようだ。

一つの織機に一人か二人。
年齢は10代から30代くらいまでだろうか。
しゃべりながら、歌いながら、
ときどき織り図に目をやって、手は休むことなく糸を捌く。
5cmもないような小さなシャトルに色とりどりの絹糸が光る。
このうねっているような柄は、河の流れを表したものだ。
エーヤワディー川のほとりに生まれたこの国らしい図案だ。
みるみるきらきらした天の衣が織りあがる。
そうかここが天国か。ここが天国なら織り子は天女だ。

こうしてできる織物は、最高級品の花嫁衣裳として取引される。
最高級のスカート地は3500ドルもする。
外国人価格でふっかけているのだろうか。
それにしても、目玉の飛び出る価格だ。
とても買えない。

うっとり見ていたら、3時間も経っていた。
写真も150枚。おなかがすいた。
ご飯を求めてふらふら歩いていると、ずっと探していた看板があった。

「soemoe」

こんなところにあったのか。いやほんとうにあの骨董屋なのか。
中に入れば分かること。
所狭しと並ぶ骨董品と、軒先で作られる新品。
骨董品というふれこみだったが、新品も製作・販売しているらしい。
それどうなのーと思わなくもないけれど、ラインナップは悪くなさそうだ。
一番多いのは仏像、次は漆器、人形劇のパペット、
真鍮のアクセサリー類、果てはナガランドのヘッドドレスまで。

しかしながら、である。
大好物のアンティークテキスタイルがない。
古い布が見たい。いい布が見たい。天然染色のいい布が見たい。
思い切って布がないか聞いてみた。
「あるよ。昨日村から仕入れたばかりだ
ビニール袋からぽんぽんと取り出される60年前の布。
どれも見事な織りだ。先ほどの工房の布と柄も材も相違ない。
伝統が受け継がれているしるしだ。
聞くと店頭に並ぶものではなくて、タイの骨董屋に卸すものだという。
市内でこの店を探していた旨を伝えると、いたく感激され、昼食をご馳走になることになった。
最近アマラプラに越してきたばかりとのこと。道理て見つからないわけだ。

ミャンマーのカレーは辛くなくて肉がごろごろしている。
かなり油っぽいが、これが白飯に絡んでうまい。
満たされたので、読み終わった日本語の本をあげることにした。
ミャンマーの民芸について、写真が沢山使われているから、文が読めなくても何とかなるはずだ。
いたく感激され、先ほどの布を譲ってもいいといという話になった。

側室のロンジー(ロングの巻きスカート)だから、使用頻度も低く、質もいい。
工房で作られる新しい布よりも、古くて質のよいものが破格で手に入った。
帰りは嬉しさをかみ締めながら自転車を漕いだ。
上の空だから少し道を間違えてしまった。

アマラプラの神様ありがとう。

ーーーーーーーーーーーーーーー
SoeMoe