ラオスと中国の国境の村で

6:30である。今日はさらに中国との国境に近い町、ムアン・シンに行く。

その近郊をバイクで回る。ガイドの手配は済んでいる。約束の6:30である。

ガイドは姿を見せない。6:45になった。

旅行代理店の人に聞くと、「たぶんまだ寝てる」「あと5分で来るって」

こうなるだろうとは薄々感じていた。

昨日予約した時に、英語を聞き取りきれていない感じがしたからだ。

 

5分経っても来るわけなかった。

キレ散らかしてまくし立てて見せて、7:00に出発。想定よりも早い。

交渉したらバイクから車にクラスアップしたし、まぁ上々だ。

 

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ムアン・シンには近郊の村から少数民族が集まる。

少数民族の朝は早いから、8:00は遅いほうだろう。

それでも市場に少数民族が出てきていて、そわそわわくわくが止まらない。

駆け出しそうになる足を抑える。

 

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ここに来ている人は、普段着の人。

民族衣装フル装備の人は居なくて、シンと呼ばれる巻きスカートだけの人や、ヘッドドレスだけの人、ポシェットがトライバルな人などなど。

日常生活レベルでもその程度の伝統的装いはするということか。

 

屋台で麺を啜って、散策する。

一角に少数民族のための服屋が固まっている(といっても2軒?)

化学染色とミシン仕事なので、あまり買い物をする感じではないが、

押しの強い黒タイ族のおばちゃんが店番をしていてやりとりがかなり楽しい。

結局腕輪を買ってしまった。

 

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 市場の半分は食品だが、もう半分は日用品を売っている。

中国との国境に近いだけあって、昨日の町よりも中国製の工業製品が多く売られていて、モノが溢れている。

私のことも、中国人だと思われていて、中国語で話しかけてくる人が結構いる。

中国人向けにラオの娘の春を売る場所もあるとか。

 

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こんなところにSupreme(たぶんパチモン)

もし、本当に、伝統的な生活を見たいなら、容易にはアクセスできないところに行くべきだろう。

しかしトレッキングを選ぶには、日程がタイトすぎた。

次の村へ行こうか。

 

「アカ族の村だ」と案内された。

黄土色の土に木造の家屋。

全てではないが、主として高床式の伝統的な家屋で、

ただし屋根はトタンに置き換わっていたりする。

 

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路肩に、タライくらいの大きさの白い塊をよく見る。

 何だろうとガイドに尋ねると、ゴムだという。

「触ってみて」と言われてつついたら、水がじわりと滲み出て私の指を押し返した。

いまは水を切っている工程らしい。

最近この辺りは、ゴムのプランテーションが盛んで、

少数民族はゴムの樹液を採集し、

中国のバイヤーがそれを買いに来るのを待っているのだという。

「いくらぐらいの利益になるの?」と聞くと、

「1kg1000Kだ」とのこと。

 1000Kというと13円くらいか。桁が1つや2つおかしくないか。

それでも貴重な現金収入で、普通にしているより儲かるらしい。

 

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挨拶をしながら村の中を歩く。

村人たちは、来訪者に対する拒絶はなく、にこやかだ。

ガイドが村人たちの質問に全て答えてくれるから私も質問しやすいし写真が撮りやすい。

ガイドを雇うメリットよ、、、、私も大人になったものだな、、、、

と噛み締めながらカメラを構える。

村のひとたちは、伝統的な衣装を着ていない。

干してある洗濯物を見ても、日常の服は西洋の服のようだ。

 

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村の子供たちに取り囲まれた。

「サワディー!サワディー!」とタイ語の挨拶。

しかしその掌は一様に上を向いている。物乞いである。

来訪者にはそうしているのだろう。

財布を出せば混乱になるのがわかるので、にこにことわからないふりする。

心は痛む。

ぶらぶら歩くと、最初はついてきた子もいたが、だんだん勝手気ままに遊びだした。

ゴム跳びは世界共通なんだなーとか考えながら、ぎゃあぎゃあ遊んでいるのをぼーっと見たり、

写真を撮ったのを見せて笑いあったりしていた。

 

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おねえちゃんは下の子供たちの面倒を見る。しかし子供が多い。


ひとりのおばあさんが近づいてきた。

アカ族のヘッドドレス。

かわいいかわいいです。ありがとうございます。

耳の後ろ、ビーズ紐の束が、簪に繋がっていて、本当にオシャレ(語彙力ない)

じゃらじゃらしているものに反応しちゃうなんて、猫か赤子か私は。

 

写真を撮らせてもらって、チップ代わりに数珠玉のブレスレット買って。

これでビジネス成立。

それにしても、そんなボロのシャツ着なくても、お金出すよって思うんだけど。 

 

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自ら物乞いにならないで。気高くいて。あなたはこんなにも美しいのだから。

と、思いはするけど、伝えもするけど(流石に物乞い云々は言えないが)

生活の合理性の前で、そうなるのは理解できるし、当然のことだ。

こちらの願望がエゴであることはわかっているし。

見せて頂いてありがとうございます。そろそろ村を出ようか。

 

と、一つの家屋から声がかかる。

ガイドが驚いて応答し、笑顔で話が弾んでいる様子だ。

「何?どうしたの?」

「僕の奥さんの友達だよ。5年ぶりかな?」

「すごいね!話してきなよ!!」

「家に招かれたんだけど、いいかな?」

「!!!YES!!!!」

 

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興奮に高鳴る心臓を抑えながら、

高床式の住居の2階(1階?)へ、靴を脱いで上がる。

テラスのように半屋外になっている部分と、壁に覆われて部屋になっている部分がある。

テラス部分で、竹のちゃぶ台にバナナの葉をテーブルクロスにしてくつろいでいる人たちの視線が突然の来訪者に集まる。

宴は終了し、片付けの段に入っている様子だ。

改めて見渡すと、大人たちとたくさんの子供。

その中に、アカ族の伝統的な衣装を着た女性がいる!!!!

あーーーー!!きゃわいいいいいいい!!!

日常に!!着てる!!風景!!美しい!!ありがとうございます!!

 

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竹のちゃぶ台は、使った後、壁掛けられていた。合理的な。

 

なんでも、今日は親戚が集まる日で、伝統的な衣装を着ている人は、ホスト側らしい。

そういう機会だと、ほぼフル装備の伝統衣装を着るのか、、、メモメモ。

話しかけたいが、彼女は忙しそうに立ち働いている。

もてなす側は大変だ。

一瞬、お盆に親戚をもてなす我が母と祖母の姿が重なる。

水道がなく井戸水のこの村で、家屋の中の水場はバケツに溜めた一角だ。

洗い物をする彼女の背中を見ながら、ラオ語の挨拶を脳内復習。

板の間のひんやりごつごつとした感覚を足下に感じながら、しばし子供たちと遊ぶ。

 

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家の中は清潔で、風通しも良い。

お茶を勧めてくれた彼女にラオ語で挨拶して話しかける。

「ありがとうございます」

「あなたはとても美しい」

「写真を撮ってもいいですか」

 彼女ははにかんで、頷いた。僥倖とはこのことだ。

こんなありがたいことがあるだろうか。

 

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改まってカメラの前に立つと緊張するのかな。

「笑って」は、「ニムニム」というのだとガイドが教えてくれた。

「ニムニム」と伝えた。

笑うことは強いて行うことではないのだ、と、

伝えた後で気がついて、赤面して硬くなったのは私の方だった。

 

ガイドに促され、感謝を伝えて家を後にした。