熱中症とアイスクリーム
さっきから頭が痛い。すごく欠伸も出る。
これ、あれちゃう?手許のスマホで検索する。
「熱中症 欠伸」で検索。はい、ビンゴ。google使える国でよかったね。
汗をめちゃくちゃかいている。
水は摂取していているから、塩分不足だろう。
結婚式でアルコールを摂取したのが引き金になったかもしれない。
とにかく早く対処しなくては。
ガイドは、お昼にしようと提案し、場所は自宅で、という。
生後2ヶ月の息子がいるのだそうだ。
そこで塩分チャージしようか。
赤ちゃんのいる家を訪ねるときには、お土産を買っていくものだ、とガイドは言う。
いやそれ完全にマッチポンプ、あんたがお土産欲しいだけと違う?
とつっこみたくなったが、頭が痛いし気力もない。
大人しく雑貨店でお菓子を買って、ガイドの家を訪れた。
高床式の開放的な1階部分に机や椅子やハンモックを出して、ランチ会。
熱中症になるような外と比べてもだいぶ涼しい。この家屋は知恵だ。
家族というには人数が多いから、こんなにたくさんこの家に住んでいるの?と
聞いたら、違うよ、とドライバーは答えた。
週に1回、この辺りに住んでいる親戚がこういう風に集まるのだという。
私は、お盆はこんな調子で海外をぷらぷらしているから、
親戚なんて正月でなければ会わない。
「それってラオスでは普通なの?」
「普通だよ」
仲がいいんだな、ラオスの家庭って。
まぁ、サンプルが少なすぎる話ではあるけれど。
頭痛も落ち着いたし、残りの村に連れて行ってもらう。
でもやっぱり、結婚式ほどのミラクルなんて起きるはずはなくて。
カム族の村は、もう民族衣装をやめて、現代的な生活をしているようだった。
ランテン族の村は、伝統的な家屋もちらほらあって、洗濯物の中には伝統的な装束も混ざって干してある。
今日行った中で一番伝統が生活レベルで残っている村だった。
ここにもビジネス民族衣装おばさんはいるので、大人しく品物(ここではバンブーペーパー)を買って、写真を撮らせてもらう。
ランテン族の女性の服は上下綿の濃い藍染で、シンプル。というかすごくモダン。
首の前から、タッセルが腰まで垂らしてあってこれまたモダンだが、ちょっと扱いにくくはないか?
聞いてみたら、そうでもないらしい。
髪型も凝っていて、前髪を薄くとって左右に振り分け、後ろ髪を簪で留めてある。
この人だけではなくて、村の女性はみんなこの髪型だ。
村の子供達と遊んでいたら、わいわい騒がしくなってきたので、なんだろうと思って見てみたら、アイスクリーム売りだった。
ラッパの音につられてみんな買いに来る。
買ってあげるとガイドが言うので、私も子供達と並んでアイスをぺろぺろする。
素朴な甘さの乳脂肪分が多いタイプのアイスクリーム。火照った体に染みる。
昭和ってこんな感じだったのかな、と思う。
「こんな風にアイスを売りに来るのはラオスでは普通?」
「普通だよ」
車通りに面した村でこんな感じならば、奥地はどんな感じだろう。
10年前に来ていたらもっとすごかったかな。
帰路の車中でそんなことを考えていたら、道端に佇むローカルおじさんに出くわした。
町まで出たいらしい。
翌日に嫌という程思い知ることになるのだが、ラオスの公共交通は貧弱だ。
ガイドはおじさんを乗せ、走り出した。
「普通だよ」
田舎ではね、とガイドは付け加えた。
また少し車を走らせると、今度は路肩に車を直そうとしている人がいた。
ガイドはその人と少し喋って、携帯電話を貸して戻ってきた。
「ラオスでは普通だよ」
とドヤ顔だ。
「ラオスの普通、好きだよ」
と私は答えた。
その後は、うつらうつらとしていたから、挨拶以外でガイドとちゃんと喋ったのはこの会話が最後だ。