イスファハーンでアフガン移民に招かれた

「イスファハーンは世界の半分」
声に出して読みたい世界史ランキングで常に上位に入るフレーズのはず。
「ヴィットーリオエマヌエーレ2世」とか「朕は国家なり」くらい人気あるんじゃないの。ちがうの?


世界の半分と謳われたイスファハーン。その美しさの半分はイマーム広場によるものだ。


夜のイマーム広場。私の写真の腕が足りない。本物はもっとすごい!

美しさのもう半分は、街の中心を流れるザーヤンデ川とそれに架かる橋が担っている。


毎日こんな橋に行ける。そう、イスファハーン市民ならね。


スィー・オ・セ橋のたもとには、チャイハネ(レストランスペース)がある。
たもとというか、2回建ての橋の一階部分。川面のすぐ上のスペースだ。
横をザーザーと水が流れている。ここでアイスだのスナックだのチャイだの食べる。
世界の半分のイスファハーンの美しさの半分を楽しむのに、これ以上いい方法があるわけない。
(いやビールがあればあるいは…ダメ!犯罪だった!)



休日の井の頭公園みたいな午後。


ハードボイルドにアイス。



もちろん、私も宿で友達になったAさんと橋の下のチャイハネで軽食を楽しんでいた。
綺麗な景色を見てぼんやりしていたら、席の向かいに女の子が4人座っていた。
いきなりに。唐突に。問答無用に。
こちらを見てクスクス笑っていた。
なんだ冷やかしか?泥棒か?それにしてもかわいい…とAさんと話していたら、右端が英語で話しかけてきた。
私たちに興味があるようだ。


みんななんか日本人っぽい。一番左の子、同級生のえっちゃんに似ている。
化粧バッチリ、スカーフの巻き方もゆるい。クラスではイケている方の女子だ。眩しい。


年齢、出身、目的と質問攻めにされた。
私の情報も提供したが、彼女たちの情報もだんだん分かってきた。
英語はあまり得意ではないようで、右端の子もあまり喋れない。なのに興味津々、好奇心旺盛で積極的。
年齢は14から19までとピッチピチだ!
そして、彼女たちは皆、アフガニスタン人だと名乗った。
アフガン難民ではない。9.11よりも前に(といっても戦火から逃れてきたことにはかわりないと思うのだが)イランに移住してきた。
イスファハーンのアフガン移民社会の娘さんたちであった。
道理て難民の悲惨さはなく、おしゃれに力が入っている。
相当気に入られてしまったようで、夕食の招待を受け、一旦別れた。

夜8時、ホステルに迎えに来てくれたのは、右端ちゃんと若い男だった。
「彼は誰なの?」と尋ねると、「私の夫です」「!!!!」
Aさんも驚いていた。右端ちゃんは人妻だったのだ。
童謡「赤とんぼ」じゃあるまいに、早すぎやしないか?移民の初婚年齢はこんなもんなのだろうか。

1時間、タクシーを飛ばして郊外の住宅街の人の家に案内された。
暗いガレージを抜けて屋内に通される。音楽が漏れ聞こえる。
ドアを開けると、明るい部屋に人がみっちり座っていた。
一斉にこちらを見る。外国人と判るやいなや、プチパニックが起こった。
私もプチパニックである。
狭い3部屋ぐらいの人の家に、80人ぐらいの人がいる。足の踏み場もない。
子供からお年寄りまで、誰もが女性だ。そして露出のある服で着飾っている。
一番奥、椅子に座っている若い女性がひときわ華やかな水色のドレスを着ている。つけまつげがえらい濃さだ。
飲み込めた。
これは、結婚式だ。


メンズはガレージで料理を作っていた。

男子禁制の宴。
順番に花嫁の前で女性たちがダンスを披露する。
普段チャドルに隠れている体を惜しげもなく見せ、妖艶で軽やかなダンスを踊る。
メガネの図書委員系の地味子さんが一番セクシーに踊っていた。ギャップにゾクゾクする。
なんでイスラムで女性を写真に撮ることが禁じられているかわかった。セクシーすぎる。これは撮りたい。
misono似のお嬢さんは珍し物好きらしく、私の手をずっと握ってくる。
我が身の幸運、眼福をかみしめていたら、「日本のダンスを踊ってよ」とせっつかれた。
断っても前へ押し出されてしまった。misonoめ。
もうやぶれかぶれである。私が踊れるダンスなんてソーラン節くらいのものだ。
Aさんとソーラン節を踊った。リズム完全無視。

そうこうしていたら、ご飯と豆・じゃがいも・肉を煮たものが入ったお弁当箱が回ってきた。
ガレージでメンズが作っていたやつである。
ここで食事の時間に突入した。めちゃめちゃうまい。
冗談のつもりで、日本語で「まめをくれ」とおかわり要求したら本当に通じてしまった。
滅多なことを言うもんじゃないと反省した。


カレーに似ているが辛くない。

10時を過ぎて、花嫁が踊り始めた。
周囲の人はご祝儀のお金を花嫁に差し出す。
花嫁は踊りながら優雅に受け取り、ドレスや装飾品に挟んだりしながらまた踊る。
(こういうときに下世話なことを考える私をなんとかしたい)

花嫁の舞が終わると、ついに新郎を先頭とする男性が踊りながら入場する。
女たちはもう肌を覆っていた。慌てて私もスカーフを巻く。
ビデオカメラも回りだした。
着席した新郎新婦の前にウェディングケーキが運ばれ、二人で入刀。
指輪、ハチミツ、お菓子、オレンジジュースなど、互に食べさせあった。
2人が踊り始めると宴はピークに達し、子供たちも踊り始める。


ハイテンショーーーーン!!男性は普通の格好。

まだまだ宴は終わらない。
しかし時刻は12時。
シンデレラは帰らなくてはならない。


私が乗ってはいけないんじゃないかと思う車で送っていただいた。
右端ちゃんもこんな結婚式したんだね。すごいね。

今日は本当に予想外の面白い展開だった。これだから旅はやめられない。