念願のサンガネール村は、、村?

布が好きだ。
特に異国の、手仕事で作られた布が好きだ。
布のことになるとテンションが振り切れる。
財布の紐も振り切れる。(しかしない袖は振れない)

ここインドは、布の国だ。
女性の着るサリーは6mもの布を体に巻き付けるという衣服だし、
男性は男性でドーティだルンギーだと腰に布を巻いている。
12億の人々が(全員じゃないにしても)それぞれにこうした衣服を着る。毎日着る。
さらに、肥沃なレグール土が綿花を育み、山岳地帯では野生の蚕まで捕れる。
大きな国土に多様な民族が暮し、それぞれに独特の手法・意匠で生活の布を作っている。
インドの布の多様性と豊かさたるや、推して知るべし。

前置きが長くなった。
つまり私はインドで布を買いたい。
すごく買いたい。めいっぱい買いたい。
なんなら制作過程を見たい。めっちゃ見たい。


ジャイプールからほど近いサンガネール村は、ブロックプリントで有名な村だ。
柄の彫り込まれた木版をぽこぽこ手で押して染料ないしは防染を施すという原始的なプリンティングだ。


手仕事ならではのプリントのズレやブレがたまらない。


ジャイプールのピンクシティ前からバスが出ている。
バスに乗って1時間くらいで「サンガネールだよ」と降ろされた。


何ここ本当に村なの?想像していたのと違う。

ごみごみした市場に並んでいるお店も日用品・食品ばかり。
道往く人のサリーも安っぽい化学繊維と化学染色、機械染めばかり。
やっぱり想像していたのと違う。
もっとこう、畑が広がる中に素朴なブロックプリントのサリーを着た人が歩いている、みたいな?
それより何より、ブロックプリントは見られるのだろうか?
不安に駆られながら人に尋ねたが、あっさりとブロックプリント屋が見つかった。
多くの店は自前の工場を所有していて、興味がある旨を伝えると工房を見学させてくれた。


ポーン!といい音を立て版木を押す職人さん。


長い作業台に奥まで続く布。


「3種類の版木でできているんだよ」と店主さん。


天井で干されるプリント済みの布。


代々伝わる版木の数々。


天井まで続く棚に版木の山!

小道を歩けば、もっと他の工程に出会うこともできる。
例えば、版木工房。

布を干している場面にも多く出くわす。

完成した布をスカートに仕上げる工房まであった。


ただ道を歩きながら30秒ごとにこんな光景に出くわすのだから堪らない。
職人さんの仕事ぶりを一週間でも見ていたい気分だ。

さらに楽しいのは、サンガネールの人々がフレンドリーに話しかけてくることだ。
観光客ずれしているのか、していないのか、
やれ「写真を撮ってくれ」だの、「どこから来たの」「名前は何」と絡んでくる。
特に子供は興味津々で、屈託のない笑顔を向けてくる。
ちょっとうざいくらいだが、今まで都会ばかりにいたせいか、なんだか癒されてしまった。


ターバンのおじさんも写真を撮ってくれとやってきた。
おじさん、襟曲がってますし、笑顔が固いですよ。

ジャイプールでは、こういう人たちには滅多に会えない。
やっぱりサンガネールは村なんだなぁ、と思った。
それもブロックプリントに関するすべての工程を見れる最高の布村だ。