乙嫁語り 5巻 感想
待ちに待った新刊が出ました!
中央アジアファンが今一番読みたい漫画、『乙嫁語り』。
大学生協で新刊を発見し、レジにゆくまで約5秒。
早く読みたくて、でも読むなら家でキャアキャア叫びながら読みたくて、
じゃあもうジム行くのやめて家帰ろうと思って、電車に乗って、
その間にやける口元を取り締まれず、情緒不安定な不審者の様相を呈しながら、
ベッドの上で貪るように読んで読み返して読んだのです。
ありがとう、ありがとうございます森薫先生。
『エマ』からずっとファンです森先生。
前回に引き続いてウズベキスタンはアラル海の双子ちゃんのお話です。
天真爛漫、我侭勝手、そうさ100%元気な双子ちゃんも、ついに結婚式であります。
表紙の絵がその花嫁衣装になるわけですが、超カワイイですね。
この衣装、実は元ネタがあります。
南タジキスタンはクリャーブの花嫁衣装だそうです。
木綿生地に絹糸で刺繍してあります。*1
双子ちゃんの元気さを表象するような原色づかいですね。
すでに指摘されていることですが『乙嫁語り』は、19世紀中央アジアの具体的な場所を舞台にしています。
しかし、服飾について細かく見てゆくとそこまでストイックに考証しているようではないようです。
だからウズベクの人にもタジクの服を着せているわけですね。かわいいは正義。*2
とはいえ、ウズベクのテキスタイルといえば5巻の表紙であるスザニ(刺繍)とアドラスのイカット(絣)であります。
4巻の表紙では、絣を着た双子ちゃんが跳ねており、2大巨頭をちゃんとおさえているなぁ、森先生流石すぎる、と思います。
ウズベクの布は中央アジアでも一二を争う鮮やかさです。
双子ちゃんの元気なキャラ設定は、
こうした鮮やかな布を着せるにふさわしいキャラとして生み出されたのではないかと勘ぐってしまいます。
更に言うならば、アラル海に注ぐ二つの河があります。
アムダリア河とシルダリア河って、双子みたいな名前ですよね。
漁師の花婿をアラル海だと見たてると、あの双子を受け止めることができたのも頷けるなぁ、なんて。
新郎の方は、アラル海で漁師をする兄弟ですが、今日ではもう見られないお仕事だと思います。
アラル海は、ソ連時代に行われた綿花栽培のための感慨工事によって、流入水量が減り、干上がってほとんど消えかけています。*4
アラル海を犠牲にした綿はいまウズベキスタンの主要輸出品であり、一概に環境破壊と批判できない側面もあります。
最近のウズベキスタンを旅しても、アドラスの絣を着た人々に会うことができます。
でも、普段着は化繊だからシャリシャリしてます。
アラル海。民族衣装。町並み…
もう失われてしまったものが『乙嫁語り』の中で生活してるのを確認すると、なんともあったかい気分になります。
以上、森先生へのファンレターでした。